11月26日午後7時、旧上郷小学校でワークショップを開催しました。

今回のテーマが子育てだったこともあり、子育てに関係のあるお仕事をされている方がたくさん来てくださいました。

ゲストは岩手県奥州市でCafe&Living Uchidaを営む株式会社COKAGE STUDIO代表の川島佳輔さん。カフェ兼託児所という今までにない組み合わせの店舗で新たな子育てのかたちを見出す取り組みをされています。

にかほの暮らしにどんなヒントが得られるのでしょうか。


川島佳輔(かわしまけいすけ)さん  

株式会社COKAGE STUDIO代表。お子さんの誕生を機に地元の岩手県奥州市にUターン。古いビルをリノベーションして2017年にカフェ兼託児所のCafe&Living Uchidaをオープン。保育士である奥さんとともに「くらしに豊かな1ページを。」というビジョンを掲げて活動する。


Cafe&Living Uchidaは、カフェと託児所が併設する店舗です。

もともとは「アートショップウチダ」という額縁屋さんだった古いビルを借りて、地域の古材を活用しリノベーション。2017年にオープンさせました。

まちのランドマークだったお店の名前を引き継ぎ「Uchida」と名付け、Livingという言葉には、だれでもくつろげる場所という意味が込められています。


奥さんの出産を機に、二人の地元である奥州市にUターン。

当時26歳とまだ若かった二人にとって、お子さんが産まれてからの生活はまるで別物。夫婦での時間やひとりの時間はなくなり、子育ての大変さを実感したといいます。

ある日、奥さんが通院する用事があり、1歳になる息子さんを少しの間預けたいと思ったことがあったそうです。

まだ現役で働いていたご両親を頼るのも容易ではなく、一時的にこどもを預けられる制度をインターネットで探してみても、十分な情報がオープンになっていませんでした。

どんな場所でどんな人がこどもを預かってくれるのか、不透明なままで自分のこどもを預けるのには不安があり、結局このときは通院を諦めることになってしまったそうです。

こういった悩みを持った家族はほかにもいるんじゃないか。

様々なライフスタイルを持った家族の暮らしに何か手助けができないかと夫婦で話し合い、「子育てのサードプレイスをつくろう」というアイデアが浮かびました。

今の社会では、保育所にこどもを預けて働くか、家で子育てに専念するかのどちらかに限られてしまいがちですが、保育所と家の間の役割を新たなサードプレイスとしてつくれないかと考え、託児所を選びました。

また自分たちが感じた、預け先の情報不足や不透明感を解消するため、子育て世代以外も含めて誰でも様子が見えるオープンな場所にしたいと考えました。

間口を広げて誰でも気軽に、目的がなくても来れる場所はなにかを考え、カフェを託児所と併設することに決めました。

カフェとリビング(託児所)はガラスの大きな窓で仕切られていて、お互いの様子がよく見えるようになっています。

カフェに来たお客さんが、今度は託児所を利用しに来てくれることも多いそう。

またカフェのスタッフもお客さんと距離感の近い対応をしていて、仲良くなると子育ての相談をするようになり、お子さんを安心して預けられるようになるそうです。

現在のスタッフ6人は皆さんお子さんがいて、こどもを連れて安心して働ける職場を目指しています。

リビング(託児所)では火曜日から土曜日の9時から17時、満6か月から未就学児のこどもを預かっています。

託児所の条件の都合上、定員は12人と決まっていますが、飛び込みの利用もできるので、急な用事のときにも利用できます。

毎週金曜日はオープンデーと名付け、利用料金なしで利用することができたり、ワークショップの開催も多数行っていて、まずはいろんな人に知ってもらい、子育てに関わるすべての人が利用できる場所にしたいと、様々な取り組みを行っています。

託児所の運営は大変なところもあるそうで、認可がないと行政からの金銭的な補助を受けられず、カフェや他の業務でバランスをとりながら運営を行っています。

しかし、カフェと託児所の併設はあくまでも手段であり、川島さんのゴールは「子育てのサードプレイス」。

今後はお店に図書館をつくったり、学童のような場所にしたり、カフェを併設した公園をつくったりと、構想が広がります。

川島さんの取り組みがまちに波及し、点がだんだんと面になっていき、まち全体が子育てしやすいまちになることを目指しています。

オープンから2年が過ぎたCafe&Living Uchida。

仕事が決まった時間ではなくフリーで働いている人や、美容院に行く間だけ利用する人、保育所を利用できる条件にはないけれど託児を利用したい人など、利用の形も多様になってきているそうです。

行政では奥州市に待機児童はいないという認識だそうですが、数字には表れてこない声がUchidaには集まっていて、利用する人の暮らしは豊かになっているんだろうな、と感じました。

川島さんが今感じているのは「こどもたちのデザインをもっと世に出したい」ということ。

お子さんたちの描く絵に日々驚かされているそうで、大人がそれにうまくステージを与えることができれば、こどもたちがもっと多様な未来を描けるようになるのでは、と考えているそうです。

「子育てのサードプレイス」というゴールに至るたくさんの道筋が、これからも川島さんのアイデアによって描かれていくことでしょう。


カフェと託児所を組み合わせるという、今までにない新しいアイデアで、まちの人たちの生活に変化を起こした川島さん。

「くらしに豊かな1ページを。」というメッセージが見える形で表れている様子に、話を聞いていてわくわくが止まりませんでした。

これからの未来を考えると、こどもたちやそのもっと先の世代に何を残せるのか、という使命めいた思いが浮かんできます。

にかほのこどもたちがこの場所の豊かな暮らしを続けていけるよう、何ができるのか考えていかないとな、と思いました。


次回のワークショップは12月17日午後6時〜。「にかほのほかに」のロゴを木版画で完成させるべく、木版画家・尾崎カズミさんを講師に木版画教室を行います。あなたの摺りがロゴに採用されるかも? 旧上郷小学校でお待ちしています。