6月29日(月)、株式会社フェリシモの東北事務所で所長を務める児島永作さんを講師にお呼びして開催したにかほのほかに教室01「秘伝!フェリシモ流・ヒット商品企画術」。

今回は新型コロナウイルスの感染拡大対策として、にかほのほかに会場とオンラインの同時開催でした。

仙台にいる講師の児島さんと、全国の参加者、そして会場に集まったにかほ市民の方を繋ぐという、初めての試み。

その様子を、ダイジェスト動画と、イベントレポートでお伝えします!

株式会社フェリシモは、神戸に本社がある通信販売会社。

年間数万点という商品を扱い、そのうちの約9割は自分たちで企画しているという、まさに商品企画のプロです。

児島さんは、そのフェリシモが蓄積してきたノウハウを、一般の事業者向けに提供する事業であるStartlineを率い、講師も勤めていらっしゃいます。

そんな商品企画を知り尽くした児島さんから、ヒット商品企画術を教えていただきました。

児島永作さん

1999 年フェリシモに入社。生活雑貨の商品企画に携わり多くのヒット商品を企画。2011 年の東日本大震災後は「とうほく帖」というカタログを発刊し東北での商品企画や復興支援プロジェクトの運営を担う。2016 年より仙台にフェリシモ東北事務所を開設し新事業 Startlineを立ち上げ同社の企画ノウハウが学べるセミナーを各地で開催。2020年度から伊賀市の「地域おこし企業人」として観光DMOの活動と連携。いよいよ自分の忍者服を仕立てる予定。趣味は草野球とワイン。特技は忍者屋敷のどんでん返しとお城の石垣のぼり。

今回は、商品企画のポイントを3つに分けて教えてもらいました。

①物語マーケティング
②ニーズの深い世界
③はみ出す商品企画

①物語マーケティング

ヒット商品が生まれる秘訣はなんでしょうか?

それは、買う人が「私のための商品だわ!」と思うような商品であること。

商品を作るとき、どんなモノを作るか、から考え始めるよりも、

どんな人にどんなことをしてあげたいか、を考えることで、そこに「主人公」と「物語」が生まれるのです。

たとえば、お味噌屋さんを例に考えてみましょう。

新しい味噌の商品を作る際、「どんな味噌を作るか」と考え始めるより、「忙しい母親世代のために、自社の味噌で何ができるか?」と考えたほうが、既存の概念に縛られない、自由な発想が生まれやすいのです。

物を作るときには、作り手の思いを企画に入れてしまいがちですが、売れる商品を作るためには、買う人が自分にとっての意味を見つけられるように、買う人の思いを込める必要があります。

では、買う人が「これは自分のための商品だ」と感じられるには何が必要なのでしょうか。

フェリシモには、「500色の色鉛筆」という商品があります。

普通は12色や24色のセットで売られていることが多いので、500もの色がある色鉛筆は世界にひとつしかありません。

と、この商品を物の特徴から説明するとこうなりますが、フェリシモのウェブサイトにはこのように書かれています。

「色鉛筆が短くなると、宝物が増えていく」

これは、500色の色鉛筆を購入した方の言葉。色鉛筆を使ってお子さんとお絵かきをした方が、色鉛筆を使えば使うほど、一緒に書いた絵が増えていく喜びを語っておられます。

このように、買ってくれた人に感動的な体験を与えられる商品であるか、ということまで想像し、その幸せな物語を描けるかどうかが、売れる商品の肝になるのです。


②ニーズの深い世界

人々が求めているものを探るのに、「ニーズ」という言葉がよく使われます。

たとえば、飲料のなかでペットボトルに入った水がよく売れているとき、「人々は水を求めているようだから、水の商品を作ろう」という決断をしても、既存の商品がたくさんある激戦区のマーケットに突入したところで売れる水を作ることはできません。

よく売れている、という事実のみからニーズを把握しようとしても、本質に至らない未熟な議論で終わってしまいます。

では、具体的な場面を想像してみましょう。

昼食後に、ペットボトルに入った水を購入した人がいたとします。この人が今回の主人公です。

その人に、「なぜ水を買ったんですか?」と質問してみましょう。その人は「水分補給のため」、と答えました。では今度は「なぜお茶でもなくジュースでもなく、水なんですか?」と聞いてみます。

そうすると、「昼食に味の濃いものを食べたから、口の中をスッキリさせたくて」という答えが返ってきました。

これだけ「なぜ?」を繰り返すと、人の深層心理なるものが見えてくることがあります。

今回の水の話では、「食後に口の中をスッキリさせたくて、人は水を飲む」というニーズが見えてきました。

そうすると、同じ水という商品を作る場合でも、「口の中をスッキリさせる水」というコンセプトのもと、激戦区の水マーケットにも参入できるのです。

ニーズを深く把握するためには、まず主人公を設定し、その具体的な状況、不満や欲求を想像することが必要です。

それによって、主人公に感動的な体験を与える商品を生み出すことができます。


③はみ出す商品企画

売れる商品のもう一つの特徴は、飛び抜けた特徴を持っていることです。

何かに「はみ出ている」ことによって、どこにでもある商品も、どこにもないものへと進化させることができるのです。

先にも例に出たフェリシモの「500色の色鉛筆」は、その数ではみ出しています。

色鉛筆は今やコンビニでも買える「どこにでもある商品」ですが、500色もある色鉛筆は世界にひとつしかありません。

色鉛筆という激戦区マーケットに参入するとき、その内容数を飛び抜けて多くすることで、他の商品との差別化に成功したのです。

「はみ出す」商品は、その特徴を多角形のグラフで表したとき、どこか一点だけが枠からはみ出すほど秀でていて、他の要素には弱点がある、という場合もあります。

しかし、全てを平均点に上げる努力より、一点の強みをとことんはみ出させることが、売れる商品には必要なのです。

目から鱗の話ばかりで、商品企画の真髄を教えていただきましたが、これは商品企画にのみ通づる話ではありません。

児島さんは、地元である三重県伊賀市で地域おこし企業人という業務にも従事されています。

伊賀市を魅力的なまちにブランディングする際にも、この企画術が活かされていることでしょう。


最後に児島さんがこんな言葉を送ってくださいました。
「No Try No Change」失敗を恐れて挑戦しなければ、何も変化は起こりません。
皆さんも、目の前の課題に対して、どんどんと挑戦を続けていきましょう!

イベントのダイジェスト動画はこちらから⬇️
https://www.youtube.com/watch?v=F3wTnIj6kZE