前回、にかほ市の一般廃棄物最終処分場に行った際の話から、食品廃棄の量を減らす必要について書きましたが、その足がかりとして僕たちが注目したのは、にかほの一次産業の現場で出る、廃棄野菜を減らすことです。

規格外野菜と言われるそれらは、日々、わたしたちの想像を超える量が廃棄されています。玉ねぎ、キャベツ、レタス、大根など、あらゆる野菜が、ちょっと大きい。ちょっと小さい。太い、細い。軽い、重い。ある一定の範疇以外に成長したという理由だけではじかれ、捨てられている現実をなんとかしたい。そう思っています。

これらのネギ全部廃棄されるんです。

そもそも「規格外野菜」の「規格外」は、規格外の人物といった言葉のように、かえって大物感を感じるほど、本来ネガティブな言葉ではないように思います。栄養価たっぷりで美味しいにもかかわらず、規格外に育ったばかりに捨てられてしまうそれらのことを考えると、僕たちは、それらの野菜たちが愛おしくて仕方なくなりました。「それでいいんだよ」「そのままでいいんだよ」そういう気持ちで、捨てられゆく野菜たちを抱きしめてあげたい気持ちになります。

そんな思いの先で閃いたのが、巻き寿司です。

まさに、そんな野菜たちを海苔巻きでハグしてあげるイメージ。

その名も「はぐるすし」。

文字を組み替えると、「ハグするし」となる(笑)、このお寿司のイメージはシンプルな細巻きです。

規格外の野菜たちを気軽に美味しく食べてもらう、そんな細巻き寿司のプロジェクト。

廃棄野菜を優しくハグする「はぐるすし」という商品から規格外野菜の活用の可能性を探りたいと思います。

しかしこれは単なる閃きだけの企画ではありませんでした。

そもそも「にかほのほかに」は、地域のみなさんが活用できる加工場的なスペースをつくりたいと厨房機器を準備する予定でした。しかし前回の記述のとおり、その前に整備しなければいけない、排煙窓や、足りない電源設備などに費用が充てられることになり、それが叶いませんでした。

そんななかで、できるだけ初期コストを抑えて始められる飲食事業を、地元有志の方や、旧上郷小学校(現にかほのほかに)の卒業生の方たちと考えていくなかで、その立地から見込まれる鳥海山の登山客にむけて、山に持って行けるようなおにぎりの製造販売が出来ないか? という話が持ち上がりました。

確かに、おにぎりは初期コストも安く始められそうなことと、にかほには美味しいお米をつくる農家さんがたくさんいらっしゃるので、観光客や市外からの登山客にむけては良いけれど、一方でそれが地域の人たちにとって魅力的に映るかどうかは、別のように思えました。内容や価格などいろんな意味で、地域の家庭で握られる美味しいおにぎりを超えることは想像以上に大変なことなのではないか?

実際、新潟県に住む友人が、商店街の復活にむけて若者たちが考えた、おにぎり屋さんのアイデアを実施寸前のところで再考を促し、地域の人が欲しいお店という視点で再検討してもらったら、真逆なハンバーガー屋ということになり、結果的にそれがヒットしたという話を聞いたこともあって、やはり地域の人たちにとって嬉しいお店でなければいけないんじゃないか? という部分がとても気になったのでした。

そこで個人的に思い出したのが、石川県金沢市にあった「ちくは寿司」というお店。

「ちくは食べたーい」と言いながらやってくる女の子たち

数年前に閉店してしまったのですが、そのお店は「細巻き」の専門店で、豊富な種類の細巻きを注文を受けて次々つくり、それを求めて地域にすむ老若男女、あらゆる人たちが買いに来ていました。偶然お店の前を通ったとき、学校帰りの女子学生がまるでクレープでも食べるかのように、巻き寿司を買って頬張る姿がなんだかとても素敵に見えて、自分も買ってみたところ、その美味しさと、小腹がすいたときにパッと食べられる手軽さに、一気にとりこになったのでした。

スナック感覚。
種類も豊富で楽しかったんです。

おにぎりは家で簡単に握れるけれど、寿司の場合は少し手間がかかります。この一手間を省けるのがお店の役割。地域のお母さんたちがちょっと買って帰って、食卓に並べたり、子供たちがおやつがわりに食べたりできる。且つ、おにぎりと違って、規格外のきゅうりを使ったかっぱ巻きのように、生の野菜をハグすることもできる。それには細巻きがぴったりなんじゃないか?と思いました。

偶然思い出した「ちくは寿司」と、規格外野菜の活用についてのイメージが合わさって生まれた「はぐる寿司」。とはいえ、細巻きなんて作ったこともない僕たち企画メンバーが、まずは細巻きづくりを経験してみないことには何も始まりません。そこで次回は、地元のあるお寿司屋さんにお願いをして細巻きづくり体験をした模様をお届けします!

text by Satoshi Fujimoto